相馬弁の特徴 発音などについて
*言葉の響き
一般的に東北弁は「暖かいイメージ」と言われる。相馬弁も例外ではないが、海側に面している地域であるせいか言葉のひびきはあまりきれいとは言えないだろう。逆に、響きがきれいではないずーずー弁が「暖かい」と受け取ることができるのかもしれない。私はこの「ずーずー弁」がたまらなく好きである。 会話内でのアクセントと単語でのアクセントは一致するとは限らず、特に2音の単語は会話内でアクセントが変わることが多い。たとえば、「雨」は「あ」にアクセントがつくが、「雨が降ってきた」の場合、「雨」の「め」にアクセントがつく。これは、文節が語尾上がりになることと関係があるためで、例えば「飴」と「飴なめる?」ではどちらも「め」にアクセントがつくように、必ずしもアクセントが変わるわけではない。 アクセントが共通語と異なる場合のある単語:「雨」「飴」「(食べるときに使う)ハシ」など。 「無アクセント地域」と言われ、言葉のアクセントがとても少ない。同音異義語では一方に接尾・接頭語をつけて区別することがある。 同音異義語を区別する為の言葉:「牡蠣」→「ざがき」(「柿」と区別する為の言葉)、「鮭」→「さけのよ」(「酒」と区別する為)など。 相馬弁に限らず、東北弁は女性も男性的な言葉使いをすることが多い。 1. 女性でも自分のことを「俺」または「おら」と呼ぶご年配の方が多い。 2.
「食べる」を「食う」と言う、など。
よく東北弁の話し方を説明するときに引用されるエピソードとして、「寒いのであまり口をあけずに話す」ことが言われる。これは北に行くほど難解になる東北弁を聞けば一目瞭然(一聞瞭然?)だろう。(ちなみに北海道の人があまり訛っていないのは、
多くの開拓者が本州から移住したためと言われる。)そのために東北人は唇を開閉しなければならない破裂音、鼻音、及びい段の発音が苦手である。このことを考慮すれば以下の特徴を理解するのは容易である。 1. 「う+マ行」の発音は、「う」が「ん」に変化。例:「んま(馬)」「んめ(梅)」など。 2. 「な」「に」「ぬ」「ね」「の」「ま」「み」「む」「め」「も」「ば」「び」「ぶ」「べ」「ぼ」は言葉の前に小さい「ん」がつく。それが誇張されてきちんと発音するようになった語句が「もんも(桃)」。 3. 特筆すべきは、「い」と「え」の発音である。この二つの音はやはりご年配の方で逆になる人が多く、相馬弁を話す私ですら戸惑うこともあるほど。小学校のときに先生が「色鉛筆」を「えろいんぴつ」とまじめな顔で言っていたのが今でも印象に残っている。
4. 「う」の発音は、「動く」という言葉でのみ、「い」に変わる。例:「いごぐな。」(動くな)など。前述3.の理由で、「動くな」の意味の「いごぐな」が「えごぐな」となることもある。
5. 「き」の発音は、「ち」に近い。あまり口をあけずに話をするために、 「き」を発音するときに舌を歯に付けて発音するためである。 6. 「い段」の発音は、「う段」に近い(「あ行」を除く)。 例:「すんにゅうせい」(新入生)など。 7. 「お段」の発音が、「う段」に近くなることがある。例:「あすぶ」(遊ぶ)など。 8. 言葉の最初にくる「し」と「ひ」の発音が、人によって違う場合がある。 例:「しっちゃく」「ひっちゃく」(どちらも「引き裂く」の意。)
9. 「す」の発音は、語頭にある場合「そ」に変化する場合がある。例:「そわる」(座る)。 10.濁点がつくべきところに、発音の便宜上、濁点がつかない場合がある。(ハフーさん)例:「初めて」→「はしめて」 「一時間」→「いぢちかん」「片付け」→「かだつけ」など 11.濁点がつくべきところに、発音の便宜上、半濁点になる場合がある。例:「ねばる」→「ねっぱる」「びったらこい」→「ぴったらこい」(「平らな」の意。)など 12.濁点がつくべきところに、発音の便宜上、他の語に音便化する場合がある。例:「短い」→「みちかい」 「難しい」→「むつかしい」「恥ずかしい」→「はつかしい」など 13.「〜の木」と表記される言葉は「〜ぬ木」と発音する。例:「柿の木」→「かきぬき」「松の木」→「松ぬ木」など。地名では「栢の木橋」→「かやぬきばし」(原町市)など。 *過去形での表現 現在起こっている事象(現在形・進行形)を過去形で表現する。そのため、他の地方の人が聞いたら過去のことなのか現在のことなのか区別が付かなくなってしまうかもしれない。
1. いた=「いる」と「いた」両方の意味を持つ。例:「ウチの息子いだなぁ。」=「ウチの息子がいる。」「ウチの息子がいた。」
2. あった=「ある」「あった」両方の意味を持つ。例:「こごさあった」=「ここにある」「ここにあった」
3.
〜しった=「している」「していた」両方の意味を持つ。例:「食事しった」=「食事をしている」「食事をしていた」
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